翌日、朝9時に出発。ドレスデンに向かう。ここは旧東ドイツの一部だったザクセン州の
中東部にエルベ川に沿って広がる古都であり、ベルリンから車で2時間程の距離である。
ここは第二次大戦時、完膚なきまでに破壊されたが、戦後、ほぼ当時のままに再建された。
前と寸分変わらぬデザインで再建するにあたり、わざわざ黒ずんだ石を使用して古さを
出すように工夫しているそうだが、新しいものが好まれる日本人からすればそのこだわり
にはもはや脱帽するしかない。
ドイツのいい所はここだと思う。我が国など古い建物を壊した後、全く新しい無粋な建物
を建ててしまうから今の様な美意識のかけらもない都会ができてしまったのだ。ドレスデ
ンでも奇跡的に焼け残った建物があるが、それと戦後建て直された建物とははっきり言って
全く見分けがつかない。
今回はドイツ人ガイドさんで日本語は話せないのだが、添乗員さんが通訳して説明
してくれる事に。とにかくどの建物も古色蒼然としていて戦後に再建された築50年
以内の建物だとはとても思えない。
残念ながら、今は改装中の建物が多くその素晴らしい建築物の半分程しか拝めなかったが・・
ゼンパーオペラは、1841年に開幕したネオ・ルネッサンス様式の王室歌劇劇場でここで
ワーグナーの「タンホイザー」の初演が行われた。
しかし、古い情緒のある街を歩いているとよくまあここまで復興させたものだと感心して
しまう。ザクセン人の街を愛する心が伝わってくるようだ。ガイドさんに戦前のドレスデンの街と
第二次大戦後の瓦礫の山と化した街の写真を見せてもらったが、
いくらヒトラー憎しとはいえ、こういう工場も何もない美しい町並みを破壊し、3万人以上もの
非戦闘員の命を奪うなど許される事ではないと思う。アメリカには歴史がないから文化遺産に対して
無神経になれるのだろうかと疑いたくもなるというものだ。日本など海に隔てられていた為、
来にくかったので他の都市を攻撃する余裕もなかったというせいもあるのだろうが、田舎の古都は
全く空爆の対象にならなかった事に比べるとローテンブルクをはじめとするドイツの田舎街まで
破壊していまうなどそれもまた一種の差別ではなかろうか。
京都や奈良はエキゾチックで珍しいから残しておく価値があるが、ドレスデンの様な古都は
ヨーロッパに掃いて捨てるほどあるからどうでもいいという・・
唯一戦争で焼け残ったのが「君主の行列」(Furstenzug)のみ。これはアウグステゥス通りにある壁画で
長さ101mに渡り、ヴェッティン家出身の歴代ザクセン王が馬に乗って行進している様子を描いている。
2万枚以上のタイルで描かれた壁画は壮観である。
ドレスデン最大の見所はザクセン公の夏の離宮「ツゥインガー宮殿」だろう。1711年から28年にかけて
建設された離宮で現在は5つの博物館の展示室に使われている。その一つ古典巨匠美術館にあるラファエロ
の「システィーナのマドンナ」は必見。
その絵は写真が失敗したので代わりに、ゴヤの絵を載せる事にする。
観光が一通り終わってバスに乗り込む。後はチェコ国境まで1時間ほどだが、国境に着くと
入国手続きに少し時間を取られてしまう。団体なのでバスに乗ったままなのがありがたいが、
「共産国は崩壊したのに何を今更警戒する事があるの」と文句を垂れる母。う〜ん、1時弱の国境
越えの手続きさえ待てないのか。私なんてトルコーシリアの国境越え待たされた事に比べると
こんなものは可愛いものである。
島国にいる私たちは陸路での国境越えなど滅多に経験できないのだから、これも旅の醍醐味
と思えばさして苦にならない。海外旅行も2ケタ目になると余裕が出てきて何でも楽しさに変換して
しまおうという癖がついてしまったようだ。
どうにかこうにか国境越えを済ませ、国境の銀行でチェコ・コルナに両替。
国境を越えると途端に家とかがみすぼらしくなるのは旧共産圏のなごりか。それだけならまだしも
国境付近に売春宿があって見た目も鮮やかなコールガール達が国境越えをしている人達に声をかけて
いる。チェコは売春容認国の様だが、美しかったドレスデンの後だけにこういうのを見ると気が
滅入ってくる。急激な資本主義体制によるインフレで生活ができなくなり、こういう道に身を
投ぜざるを得なかったであろう彼女たちにはそれぞれの事情があるのだろうが、物欲の為だけに
援助交際をする我が国の女子高生とは何という境遇の違いだろう。
6時頃、プラハに到着。今度の宿泊先の「HOTEL PRAHA」は旧体制下からある5ツ星ホテルで
かつて天皇陛下も泊まられたそうだ。閑静な高級住宅街にあり、周囲の環境はいいが、市街地から離れて
いて気軽に外出できないのが玉にキズ。今は、街にアメリカ資本のホテル・チェーンが次々に建てられ
ているので、おそらく、こういう閑静な場所を好む人か車で自由に動ける人しか進んで泊まらないだろう
と思われるが、数部屋を空にするより団体料金で大勢を泊めた方がホテル側にとってはまだましという
もので、料金に仕組みはよくわからないが、そのおかげで私たちの様な格安ツァーでもこういう高級
ホテルに泊まれるのだろう。全くありがたい事だ。
部屋は広く、バスとトイレは別々。ベランダは6畳以上はあり、手すりには草花が飾られている。
遠くにはプラハの街が一望できる。このダブル・ルームだけで我が家の1階分のスペースを悠に凌ぐ
のではないだろうか。こういうホテルを一度経験しただけに翌日のホテルの落差が身に染みたものだが。
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