エニスキレン
エニスキレンの名を知ったのは、U2の『魂の叫び』でだった。
1987年、ここで平和なプロテスタントの行進が行われている最中、IRAが仕掛けた爆弾によって、政治に軍にも縁のない一般人が12人命を落とし、この事件によって、ささやかに残っていたIRAに対する信用と同情は失墜し、たちまち世界中から非難が浴びせられた。
U2はドキュメンタリー映画『魂の叫び』の中でこの事件を引き起こしたIRAを批判しながら「Sunday Bloody Sunday」を怒りをこめて歌った。
デリーやベルファストと並んでテロのイメージが強い街だが、実際のエニスキレンは、風光明媚な街で、なぜ、IRAがこのような美しい田舎町でテロを起こさなければならなかったのか、疑問である。
バスは街の中心地に着くが、周辺にB&Bやホテルらしきものが見当たらない。作家の武部先生によると、中心地はいわばビジネス街で、夜になるとゴースト・タウンになってしまうという。ほとんどのB&Bは街外れにあり、たまたまツーリスト・インフォメーションが開いていたから予約する事ができたが、もし、インフォメーションが開いてなかったら、B&B探しに駈けずり回らなければならなかっただろう。私が予約したB&Bは街から4キロ離れた場所にあるのだが、バスもないこの街では、車に頼るしかなく、車も運転できないお年よりや、私のような旅行者はタクシーが重要な足となる。どちらにせよ、アイルランドは車がなければ活動範囲が限られてしまうのだが。
街には川が流れ、その流れは湖へと注ぎ込まれる。湖に浮かぶ島にはケルトの遺跡があり、遊覧船で周遊できるようになっている。湖の周囲には遺跡も多く、効率よく回ろうと思えば観光ツァーに参加すればよいのだが、残念ながら私はツァーに参加しそびれてしまった。我ながら自分の要領の悪さが嫌になってしまう。
しかし、このエニスキレンではあくせくと観光する必要はない。私はのんびりと川と湖を眺めて、過ごした。川のほとりで、北アイルランドでは珍しい太陽を浴びながら昼寝をするのは最高の贅沢である。
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