ヴェネツィア


列車は大陸側メストレ地区から海の絶景の中を島に向かってひた走る。『旅情』でキャサリン・ヘプバーンが8mmを回しながらその素晴らしい光景に歓声を上げていた。
ヴェネツィア・サンタ・ルチア駅を出るとすぐに運河だ。 車の乗り入れができないヴェネツィアには3種類の交通手段があるが、一番リーズナブルな水上バス、ヴァポレットで、サン・マルコ広場に向かう。由緒あるパラッツォ(館)や聖堂などの建築物を眺めながら優雅な船旅を楽しむのもおつな物である。ヴァポレットは車を利用する事のない本島の人の重要な交通手段でありながら、私のようなおのぼりさんの為の遊覧船の役目も果たしているというありがたい乗り物である。後部は少々狭いがオープン・デッキになっていて、観光客は自然とここに集まり、写真撮影を楽しんでいる。特にリアルト橋を少し過ぎた辺りからの眺めは圧巻で、格好の撮影ポイントとなっている。
ヴェネツィアはいわば、蛮族の侵入から逃れた大陸の人々が流れ込んだ亡命の地だった。伝説によると、ローマ帝国末期、ゴート族の侵攻を避ける為、人々は干潟へと移り住んだのがヴェネツィアの歴史の始まりだと言われている。当事は湿地帯のみが広がる荒涼とした土地だったが、さすがに蛮族と言えどもこのような場所を欲しがりはしなかっただろうから、人々にとっては格好の避難場所だったに違いない。
 最初は漁業で生計を立てている鄙びた港町だったが,やがて航海術の発展に伴い、街は栄えていった。その後、イギリス、オランダなどの新興海洋国の台頭で次第に没落したが、政治経済へと向けていたエネルギーを文化を洗練させる事に費やし、現在ヴェネツィアは過去から伝わる歴史的文化的遺産とその類まれな美しい風景で世界中の観光客を魅了している。


溜息の橋




サン・マルコ寺院